相続をするか相続放棄をするかの判断や遺産分割協議のため、あるいは相続税の申告のため相続財産や負債の調査を行う必要があります。
このページでは財産や負債の調査の方法について総まとめとして解説します。
ひとまずこのページをご覧いただければ必要な知識は網羅できると思います。
相続財産の調査の方法
第1、預貯金の調査
1.金融機関への問い合わせ
預金の場合は、一括紹介制度のある生命保険(生命保険協会)や証券(証券保管振替機構)の場合と異なり、一括調査の制度はありません。
そこで、個別の金融機関に問い合わせを行い「残高証明書」や「取引履歴」を取得する必要があります。取引履歴は一般的に過去10年分履歴の開示を受けることができます。銀行によっては長期間の履歴を開示してくれる場合があります。
通常は相続開始時の残高を特定すれば足りるのですが、ある相続人が被相続人の口座から生前に贈与を受けているケース、被相続人の口座から使い込みを行っているケース、相続開始後の預金から多額の出金を行っていた場合は、生前贈与や不当利得として返還請求訴訟を提起する必要がありますので、ある程度の期間の履歴を取得することが必要です。
なお、履歴の取得費用は銀行によってまちまちで安価で応じて頂ける銀行もあれば、手間を加味してある程度の費用を請求される銀行もあります。
銀行に照会を行う際の必要書類
一般的に
・被相続人様の死亡の事実が分かる戸籍謄本等
・相続人様であることが確認できる戸籍謄本等
・相続人様ご本人様であることが確認できる運転免許証等
・相続人様のご印章
が必要となります(ゆうちょ銀行ホームページ、「よくあるご質問」No742より)
戸籍謄本類は、原本とコピーを提出し原本還付を受けることが通常です。
また、昨今では、戸籍の提出に換えて法定相続情報証明制度を利用することもあります。
2.遺品整理から
遺品整理の際に亡くなった方の通帳やキャッシュカードが見つかる場合が多く預金が判明します。
3.判明した預金の履歴の確認
判明済みの通帳や上記1で述べた方法で取得した取引履歴を丁寧に確認することで、被相続人の他の銀行の通帳が判明することがあります。
また預金ではありませんが、取引履歴の確認をすることで、生命保険や証券の存在が判明することもよくあります。
4.日本年金機構への問い合わせ
被相続人の方が年金を受給している年齢であるものの年金振込通帳が見当たらない場合、年金事務所に生前の被相続人の年金振込先口座の問い合わせを行うことで口座が判明するケースもあります。
必要書類は金融機関への問い合わせの場合と同じと考えられます。
5.公共料金・携帯電話の引き落とし口座の調査
故人宅の電気・ガス・水道や故人が使用していた携帯電話の引き落とし口座を調査することで口座が判明することがあります。
必要書類は金融機関への問い合わせの場合と同じと考えられます。
第2、株式・投資信託などの確認方法
1.ほふり(証券保管振替機構)への照会
(1)ほふりとは
証券保管振替機構は、上場株式、社債、投資信託の名義の書き換えを行っている唯一の機関です。被相続人の証券の保有の有無は「ほふり」に一括で照会することが可能です。
(2)開示される情報
開示される情報は、被相続人の口座が開設されている証券会社、信託銀行等の一覧で個別の銘柄までは開示されません。株式の個別の銘柄は、「ほふり」から開示された証券会社の情報をもとに別途保険会社に照会を行う必要があります。
(3)開示の手続き
必要書類を収集してほふりに郵送します。
注:以下は相続人が子や配偶者の場合の必要書類として証券保管振替機構に記載されていた書類です。その他の場合は別の書類が必要ですので、詳しくは証券保管振替機構のホームページを確認してください
- 開示請求書
- 相続人の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード)
- 戸籍(被相続人の死亡と相続人とのつながりのわかる書類)
- 相続人の現在の戸籍謄本又は抄本(被相続人の死亡日以降に発行されたもの)
- 被相続人の死亡日の記載のある除籍謄本
- 被相続人の住所の確認書類
- 被相続人の生前の住所がわかる書類
2.預金口座からの確認方法
判明済みの通帳の取引履歴を丁寧に確認することで、被相続人の証券の存在が判明することもよくあります。
3.遺品整理
遺品整理の際に亡くなった方の証券関係の書類があり証券の存在が判明することがあります。
第3、被相続人の生命保険の調査
お亡くなりになった方が契約していた生命保険契約の有無は、生命保険協会に問い合わせることで一括照会が可能になりました。詳細は、生命保険協会のウェブサイト(https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/)をご確認ください。
なお、調査結果は生命保険契約の有無のみでで、生命保険契約の種類の調査や保険金等の請求の代行は行われません。
そのためある保険会社で契約があることが分かった後は、各保険会社に直接問い合わせを行って保険契約・種類の確認をする必要があります。
また、開示されるのは生命保険協会が照会を受けた時点で有効な契約は開示対象であり既に終了している契約は開示対象ではありません。このような場合は、各保険会社に個別に照会を行う必要があります。
第4、不動産の調査
亡くなられた方の不動産は主に以下の方法で特定します。
1.固定資産税の納税通知書
毎年5月ごろに自宅宛てに固定資産税の納税通知書が送付されますが、納税通知書には所有している不動産の一覧が記載されています。納税通知書には、亡くなった方が所有していた不動産の大半が記載されており所在地番まで確認できます。
但し、固定資産税が課税されない道路や保安林などは納税通知書に記載されていない場合があるので注意が必要です。
2.固定資産名寄帳の確認
名寄帳簿は固定資産の一覧が記載された書類で、物件所在地の市役所等の役所で取得することができます。名寄帳には、非課税の物件の為に、固定資産税の納税通知書には記載されていない、道路・保安林などの物件が記載されている場合がありますので、必要に応じて取得されることをお勧めします。
遺産分割調停を申し立てた場合裁判所から名寄帳の提出を求められることもあります。
3.登記
不動産の登記簿謄本(履歴事項全部証明書等)を取得し、所有権や抵当権の状況を調査します。
負債の調査
相続をするか相続放棄をするかの判断にあたって負債の調査は特に重要です。特に被相続人の自宅に行ったら消費者金融の書類があったり、被相続人と没交渉でどのような負債があるかわからないというケースは負債の調査は特に重要です。
1.遺品からの調査
亡くなった方が消費者金融などから借り入れをしていた場合、借入先から残高の記載された書面や督促状が届いていることがあります。これにより、どこの金融機関から借りていたのかを特定できます。
また、預金通帳を確認することで借り入れや返済の履歴が判明することがあります。
亡くなった方のクレジットカードを使用していた場合、借り入れやリボ払いによる負債が存在する場合がありますので、クレジットカードを発見した場合カード会社への照会も有効な手段です。
2.役所への問い合わせ
税金関係に滞納がなかったか否かは、被相続人が住んでいた所在地の役所に直接問い合わせて、滞納税や滞納公共料金がなかったか確認することができます。
3.信用情報機関への照会
信用情報機関とは金融商品の取引状況や返済履歴などの個人情報を登録・管理する機関で主な信用情報機関には以下の3つです。負債がいくらあるかわからないときに信用情報機関に問い合わせて確認することは一般的です。
最近は、信用情報の開示請求をオンラインでできるので非常に便利になりました。
信用情報機関として主なものは以下の3つです。
①CIC (Credit Information Center)
クレジット会社の共同出資により、昭和59年に設立された、主に割賦販売や消費者ローン等のクレジット事業を営む企業を会員とする信用情報機関です。(CICのホームページより抜粋)
②JICC (Japan Consumer Credit Information Center)
消費者金融が中心となって設立された信用情報機関です。(JICCホームーページより)
③全国銀行個人信用情報センター
全国銀行協会 (JBA) によって運営されている信用情報機関で、銀行やクレジットカード会社などが加盟しています。
①のCICと②のJICCのいずれか一つと、③の全国銀行個人信用情報センターの2つに照会を行えば、概ね負債の情報を知ることができます。
具体的な照会の方法は、各信用情報機関のホームページをご確認ください。
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