債務者が担保権付の自宅不動産を有しており、そのローンが自宅価値を上回るいわゆるオーバーローンの自宅不動産を有する場合、残ローンが固定資産評価額の2倍を超える場合には、自宅不動産は資産性が無く不動産を有していたとしても同時廃止として取り扱うなどの運用が各地の裁判所でなされています。
上記運用は様々な現在様々なウェブサイト上で言及されているかとおもいます。
ここでふと、同時廃止事件→免責後に債権者が自宅不動産の担保権を実行するということは良くありますが、債権が免責されながら担保権を実行できる根拠はなんだろうかと気になりました。
この点、担保権は破産手続中でも破産手続と無関係に行使できる(破産法65条1項)という前提がありますので、免責後の債権者による担保権の実行を当たり前のように取り扱ってきましたが管財配当事案と比較すると違和感はより際立ちます。
というのも管財配当事件となった場合、担保権は破産手続と無関係に行使できる(破産法65条1項)の規定から債権者は担保権を実行し、担保権で充当できない部分のみ配当手続に参加するとされており、そのため免責される部分は担保権で担保されない負債の部分とされています。つまり、免責される部分は担保で担保されない部分と明確です。
それに比べて同時廃止事件の場合そのような過程を経ていませんので、担保権で担保されない負債部分が明確ではなく債権全額が免責対象となるように思われるからです。
この点について、破産法の免責についての条文である、253条2項に「免責許可の決定は破産債権者が破産者の保証人その他の債権者と共に債務を負担するものに対して有する権利及び破産者以外の者が破産債権者のために供した担保に影響を及ぼさない」と規定されており、破産者以外の担保の実行については免責の効力が及ばないと規定されています。
しかし、上記のケースのように、破産者の不動産の担保権実行に免責の効力が及ばないのかはやはり定かではありません。
しかし、この点に関する、条解破産法の記述には 「ところで、・・別除権は、破産手続による制約を受けず、したがってまた、免責許可決定によりなんら影響を受けることはない」との記載がありつつ、「本条2項(※253条2項のこと)は免責の効力が破産者の保証人や物上保証人に対する破産債権者の権利に影響を及ぼさない旨を規定しているが、破産債権者の別除権が免責の効力を受けないことは当然である。なお、本条について立法上の問題点を指摘するものとして、松下151頁」(条解破産法第2版1677頁)との記載がありました。
上記文献によると破産債権者の別除権が免責の効力を受けないことは破産法上規定されていないものの当然であることが理由のようであり、感覚的に「当然」であることは理解できますが,被担保債権が免責されて消滅するなら担保権も消滅するように思えやはり疑問は残ります。
当たり前のように処理してきたことも、詰めて考えると疑問がわくことがあります。