コラム

mintsについて(裁判のweb化)について

本日令和6年1月24日、兵庫県弁護士会本館にてmintsについての研修がありました(題名:mintsを知ろう研修会)。当職の備忘録を兼ねてmintsについて私なりに纏めてご説明します。まず最初にですが、本日研修頂いた講師は、神戸地方裁判所の裁判官及び書記官の皆様と研修を準備くださった弁護士の皆様でした。受講者を飽きさせないように、一部寸劇形式にして頂くなど素晴らしい研修をありがとうございました。

1,mintsとは

mintsとは裁判所が進めている裁判のweb化の一つの過程です。(web化の全体像については下記リンクををご参照ください、https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00316.html)。つまり、令和4年5月18日、民事訴訟法等の一部を改正する法律が成立しそれ以降順次裁判のweb化が進められており、令和5年3月からmicrosoft のteamsを使ったweb上での弁論準備手続きが行われているのはその一例ですが(改正法87条の2)、mintsはそれをもう一段階進めるものです。ですが、まだ以降の途中の段階であり完成形ではありません。web裁判手続きの最終移行は令和7年が予定されており、完成形は概ねweb上で裁判手続きが進行することになります。なお、mintsの名前の由来は書記官によれば、民事裁判書面電子提出システムの略称で、「民事」のminと提出の「t」とシステムの「s」の組み合わせでmintsとのことでした。「電子」が略語に入っていないと書記官が自嘲気味に仰っていましたが電子化が重要ですからそのご指摘は仰る通りかと思います。

2,mintsは移行期のシステムである

民事裁判のweb化は、最終的には令和7年度をめどに完成することが予定されています(https://www.moj.go.jp/content/001408254.pdf)。完成すれば提訴や書面の提出、記録の管理はweb上で完結することになります。つまりmintsは移行期のシステムの位置づけの様です。以下、これまでのweb化の流れとこれからの予定を纏めておきます。

1,web化以前の状況

(1)訴訟提起は紙ベース。裁判の準備書面、証拠の提出も紙ベースでFAXや郵送で提出。

(2)裁判の進行は、片方代理人弁護士が出廷した電話会議システムを用いた弁論準備が主。

2,web化後現在の状況

(1)訴訟提起は変わらず紙ベース。裁判の準備書面、証拠の提出も変わらず紙ベースでFAXや郵送で提出。

(2)裁判の進行は、双方代理人弁護士も出廷せずmicrosoft teams アプリを用いたweb会議での弁論準備期日が主。この段階が本稿記載時点のweb化の現状です。

3,mints導入後 ( https://www.courts.go.jp/saiban/online/mints/index.html )

(1)訴訟提訴は変わらず紙ベースです。しかし、web化が進められ裁判の準備書面、証拠はweb上でデータ提出することになります。もっとも、記録の管理は裁判所書記官が紙ベースで行われます。つまり、基本的には紙媒体を用いた記録の管理が行われますが、一部web下されることになります。

(2)裁判の進行は、双方代理人弁護士も出廷せずmicrosoft teams アプリを用いたweb会議での弁論準備期日が主。

4,裁判のweb化完成(令和7年を予定) 

(1)訴訟提起は電子データで提出。また、裁判の準備書面、証拠はweb上でデータで提出することになります。また、記録の管理もweb上で行われることになります。つまり、完全に電子媒体(web)上で裁判が完結されます。これに伴い裁判所において紙の記録は存在しないことになります。

(2)裁判の進行に、双方代理人弁護士も出廷せずweb会議での弁論準備期日が主。但し、現在のようなmicrosoft teamsアプリの使用を継続するのか、裁判所が新たなアプリケーションを開発、配布するのかはわかりません。

3,mintsで変わること

上記のように、mintsでこれまでの運用と変わることは裁判の準備書面や証拠説明書、証拠をweb上で提出できるという点に尽きるかと思います。その他は、従前と変わらないようです。それでも従前のようにFAXや郵送をしなくて良くなるのでかなり楽になるかと思います。書面の受領書もweb上でできるので便利です。

4,mintsの具体的な利用の流れ

・mintsの利用は両代理人が同意しないと利用が開始されません。

・利用が決定した場合は裁判所書記官に登録のメールアドレスを知らせて書記官から招待メールのようなメールが来ます。そしてmintsのサイトで各事件の利用の登録がなされるようです。この点は、現在のteamsを用いた手続きと共通しているように思います。また、ログインの際にはIDやパスワードの他にSNS認証が必要となり携帯電話番号の登録が必要になります。

・利用の登録が出来たら、mintsの画面にログインすると各事件の画面が表示されます。例えば、神戸地裁で係属しているある事件番号の事件があれば表示されます。

・双方代理人はもっぱら書面の提出はmints上で行うことになります。書面の提出の際には、mintsサイトのアップロード画面から準備書面や証拠のファイルをアップロードします。アップロード形式はPDF形式のファイルをアップロードします。因みに私も知らなかったのですが、通常弁護士はワード形式でファイルを作成すると思いますが、別途「名前を付けて保存」する際に「PDF形式」が選択でき、簡単にPDFファイルを作成できます。

・片方の代理人がアップロードした場合、メールにて相手方代理人に対し、書面がアップロードされた(提出された)旨の連絡が入ります。相手方代理人は、mintsのサイトに入り、サイト上で「受領書」を作成できるので作成してmints上で「受領書」を送信します。

・なお、訴訟代理人以外に補助者として事務員のアドレスで別途アカウントの登録が可能です。つまり弁護士自身が書面をアップロードする必要はなく権限を付与された「補助者」(※事務員)で書面のアップロードが可能です。

5,mints利用上の疑問点質問点

本日の研修を受け受講者から様々な質問がなされましたが、重要と思われる点をピックアップします。

・一つのメールアドレスを複数の利用者で使いまわすことはできないません。例えば事務局が複数在籍しているがメールが一つという場合は使いまわすことが出来ないということです。

音声や動画ファイルのアップロードはできません。あくまでmintsは書面の提出しかできません。

一度アップロードすると書面の提出になるので差し替えはできません。訂正が必要な場合訂正申立書対応になるとのことです。但し、秘匿情報を記載した書面を誤ってアップロードしたような場合は個別に書記官に相談してくださいとのことでした。

・証拠は例えば甲1~甲5まで提出する場合、甲1、甲2、甲3と個別にPDFにしてアップロードする必要があります。甲1~5を纏めて一括でPDFにして送信することはできません。この点は従来より作業量が増えると思います。裁判によっては一気に20個の書証を出すこともありますのでいちいちスキャンしてPDF化するのは結構面倒かもわかりません。なお、甲1の1、甲1の2などの枝番単位は「甲1」等にまとめてアップロードが可能です。

以上、mintsの紹介でした。

文責:弁護士 金山 耕平(かなやま総合法律事務所/神戸市神戸駅)