コラム

コンビニエンスストア加盟店の労働者性

コラム労働問題

1、はじめに

先日、テレビ報道を見ていたところ、コンビニエンスストア加盟店が労働組合を結成し本部側との団体交渉を申し入れたが本部側が応じないために東京都労働委員会に救済申し立てを行なったところ、労働委員会が加盟店側の申立を認めたとの報道がなされました。今回は、コンビニ加盟店の労働者性について検討したいと思います。

2、コンビニオーナーによる労働組合結成の背景と本部の対応

上記の通り、コンビニエンスストアオーナー(加盟店)が労働組合を結成し(ファミリーマート加盟店ユニオン)本部に団体交渉を申し入れています。
その背景には、コンビニエンスストア加盟店が本部に多額の上納金を納めたり、契約を更新されなかったりなど不利益な地位に置かれていることが背景にあります。
詳細については、下記記事をご参照ください。
http://toyokeizai.net/articles/-/68462

これに対し、本部側はコンビニ加盟店が労働者であることを否定しそのような交渉には応じないとしてきたため、コンビニ加盟店が結成する労働組合が、東京都労働委員会(都労委)に救済命令の申立を行なったところ、東京都労働委員会はコンビニ加盟店が労働組合法上の「労働者」に該当すると判断しました。本部側は不服を申し立てているようです。
東京都労働委員会がコンビニ加盟店が、労働組合法上の「労働者」に当たると判断したことは画期的なことですが、果たして法律上コンビニ加盟店が労働法上の労働者に該当し労働者保護規定の適用を受けるのでしょうか。
コンビニエンスストアのようなフランチャイズは、法律的には、本部(フランチャイザー)と加盟店(フランチャイジー)の対等な契約関係という構成になっており、これまで法形式的にはオーナーは労働者に該当しないとされてきたことから問題になります。

3、労働者性の判断基準

労働法上の労働者に該当するためには、労働法上の各法律が定める「労働者」に該当する必要があります。同じ労働法内においても、法律の目的によって「労働者」性の判断基準は異なっています。例えば、労働基準法上の「労働者」と労働組合法上の「労働者」はその適用範囲が異なるとされています。

(1)労働基準法上の「労働者」の判断基準

労働基準法9条は「労働者」について「使用される者で、賃金を支払われる者」と定義しています。つまり労働基準法上「労働者」に該当するには「使用」性(使用者の指揮命令を受けていること)、「賃金」性(労働の対価として報酬を受けていること)の要件が必要とさています。
労働基準法上の労働者に該当する場合、労働時間規制、残業規制、最低賃金に関する規制(最低賃金法の「労働者」も労働基準法上の労働者と同義)などの保護を労働者は受けられることになります。

(2)労働組合法上の「労働者」の判断基準

労働組合法3条は、「労働者」を「賃金、給与その他これに準じる収入によって生活する者」と定義しています。労働基準法上の労働者概念と異なって、「使用」性が問われておらず、報酬面においても厳密に「賃金」性が求められず「これに準じる収入」でも「賃金」性が認められています。
これは、経済的に弱いものにある労働者に団結権や団体交渉権を認めて労働者保護を進める労働組合法の趣旨からは、経済的従属性があれば労働基準法のような人的な従属性がなくても労働者を保護すべきと考えられるからです。
裁判例でも、労働組合法上の労働者は労働基準法上の労働者よりも広く労働者性が認められています。例えば、プロ野球選手も労働組合法上の「労働者」とされており、選手会は労働組合を結成しています。

裁判例が、具体的に労働組合法上の「労働者」をどのような基準で判断しているかですが、
①労働者が事業組織に組み入れられているか、
②契約内容が使用者によって一方的に決定されているか、
③報酬が労務の対価としての性格を持つか、
④業務を断ることができるか、
⑤指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束性、
⑥事業者性
なお、労働組合法の「労働者」に該当した場合は、労働組合法上の団結権や団体交渉権が付与されます。

4、コンビニエンスストア加盟店の労働者性

さて、本題のコンビニエンスストアの加盟店が労働法上の労働者に該当するのでしょうか。
この点に関してまずは労働基準法上の「労働者」には、「使用」性の要件等を満たさないので該当しないと考えられます。
では、労働組合法上の「労働者」に該当するでしょうか。東京都労働委員会は、「労働者」性を認めましたが労働組合法の解釈からみて妥当でしょうか。

まずは、東京都労働委員会が、「労働者」性を認めた理由は下記の通りですので引用します(一部略)。
http://www.toroui.metro.tokyo.jp/image/2015/meirei24-96.html  参照

「フランチャイズ契約であっても、その実態においてフランチャイジーがフランチャイザーに対して労務を提供していると評価できる場合もあり得るから、フランチャイズ契約との形式であることのみをもって、労働組合法上の労働者に該当する余地がないとすることはできない。本件の実態を鑑みると、加盟者は、会社に対して労務を提供していたといえる。」としたうえで、
①加盟者は、会社の事業遂行に不可欠な労働力として組織内に確保され、組み入れられている
②契約内容は、会社によってあらかじめ定型的に定められたものである
③加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入としての性格を有する
④加盟者は、会社からの業務の依頼に応ずべき関係にある
⑤広い意味での指揮監督の下で労務提供している実態がある
⑥加盟社が顕著な事業者性を備えているとはいえないこと。
から、加盟者は、労働組合法上の労働者に当たる

上記のような東京都労働委員会の判断は弱者保護という点においては画期的ですが、果たして、①のように「労働力として組織内に確保され」とか③のように「加盟者の得る金員は、労務提供に対する対価又はそれに類する収入」ということができるのかは個人的にはハードルがあるように考えています。従来の裁判例等からみて、かなり踏み込んだ判断であるということができそうです。
いずれにせよ、本件は本部側が争っており、決着は先になりそうですが、判断が変更される可能性も十分にあると思われます。
本件は「労働者」性の判断に非常に大きな影響を与える可能性のある事件ですので、今後の事件の進展に注目したいと思います。