コラム

退職後の懲戒処分(労働問題)

退職後の懲戒処分(労働問題)

東京都の豊洲市場移転問題と関連して先日小池百合子都知事が都議会において市場長等歴代の関係者を調査し過去にさかのぼって懲戒処分をすることも検討していると答弁をしました。

これは、退職後に従業員の懲戒処分ができるのかという問題に関連しますが、本稿では退職後に不正が判明した場合、会社が改めて従業員を懲戒解雇処分とできるのかについて、今回のような公務員ではなく民間企業のケースを例に検討して見ます。(なお、豊洲の問題についてはさまざまな報道がなされており不正があったかはさておき問題の提起としてあくまで引用したものです)

まず、すでに従業員が自己都合退職等で円満退職をしていた場合、すでに雇用関係は終了しているので同じく雇用関係の終了に向けられた懲戒解雇処分をしても無意味と考えられます。但し、不正発覚後調査中に、従業員が先手を打って自己都合退職の退職届を出したような場合には、退職の効果が生じる14日間の間に会社が調査して懲戒解雇事由が明らかにし同期間内に懲戒解雇処分を行なえば同処分は有効と思われます。

では、さらに進んで従業員が退職後に懲戒解雇事由が判明した場合、会社は退職金の不支給や返還をなしうるのでしょうか。この点は、原則としてあらかじめ会社の退職金規程に「懲戒解雇以外の事由により退職したものについて、在職中、懲戒解雇に該当する事由があった場合退職金を不支給あるいは返還させるものとする」旨の規程がないと不支給あるいは返還の処分はできないと考えられます。

また、会社があらかじめ不支給あるいは返還規程をおいていたとしても、退職金は、長年の労働の後払い的性格及び功労報償的性格も有するので、懲戒処分事由があるからといって、退職金の不支給まで課してよいかは別途判断が必要になります。

そのため、懲戒処分事由がありあらかじめ会社に退職金不支給規程が定められていても、必ずしも退職金を不支給としてよいとは限らないということができると思います。実際に、懲戒解雇処分は有効としながらも、退職金不支給は認められないとする裁判例もございます。