認知症などに罹患して判断能力の落ちたご親族や亡くなった方がどのような生命保険に入っていたかわからない・・といったケースはこれまで時折見られたと思われます。
それゆえ、本来受けられる給付を受けられなかったケースもあるでしょう。
これまで、生命保険契約の有無の調査は、各保険会社に対し個別に行う必要があり相当煩雑でしたが、本日(令和3年7月1日)から生命保険協会に問い合わせることで加入している保険会社43社に一括照会が可能となる制度がスタートしました。なお、現在日本で営業している生命保険会社43社は全て生命保険協会に加入しているので、一括請求でもれなく保険の調査をすることができることとなります。
詳細は、生命保険協会のウェブサイト(https://www.seiho.or.jp/contact/inquiry/)をご確認いただければと思いますが、簡単に私の方で概要を記載します。
制度を利用できる方は
- ア)生命保険契約者が死亡した場合→相続人(あるいはその代理人)
- イ)生命保険契約者存命中の判断能力低下時→3親等内の親族(あるいはその代理人)
ただ、イ)の判断能力低下時の申請には医師の診断書の提出を求められることもあるようで手続きがスムーズに行かない可能性もあるようです。
そのため、生命保険協会では、本制度を利用する前に
- 生命保険証券を探す
- 生命保険会社から定期的に送付される通知物を探す
- 預金通帳の保険料の口座振替履歴等を確認する
など、まずは家族で生命保険契約を調べ、制度を利用する必要があるかを検討してくださいとのことです。
費用
1件 3000円です。
手続きの流れ
- 照会者が照会申込書を生命保険協会に提出する。
- 生命保険協会が加盟会社に対し照会対象者が保険契約者または被保険者となっている生命保険契約の有無について調査依頼を行う。
- 加盟会社による調査結果(生命保険契約の有無)は、生命保険協会にて取りまとめのうえ、照会者あてに回答する。
注意点
- 調査結果は生命保険契約の有無のみであり、生命保険契約の種類の調査や保険金等の請求の代行は行われません。
→そのためある保険会社で契約があることが分かった後は、各保険会社に直接問い合わせを行って保険契約・種類の確認をする必要があります。また、保険金の受け取りがある場合はなどは各保険会社で手続きが必要になります。 - 開示されるのは生命保険協会が照会を受けた時点で有効な契約は開示対象であり既に終了している契約は開示対象ではありません。
→例えば相続発生直前に解約された保険など、照会時において契約が終了してしまったものは一括調査で出てきません。
このような場合は、各保険会社に個別に照会を行う必要があります。
以上になります。一括で43社での契約が確認できることから使い勝手の良い制度かと思います。
文責:かなやま総合法律事務所 弁護士 金山 耕平