離婚問題

DV問題について

DVの被害に遭っていると「逃げる」「誰かに相談する」などの考え方が浮かばず、身体や生命に危険が及んだり、うつ病などの精神疾患を発症したりするケースもあります。
また、自分で離婚の話をするとひどい暴力を振るわれる恐れがあるため、被害者が自分の力だけで離婚を進めるが大変難しい状況です。
DVは第三者から発覚することが少なく、当事者が積極的に動かなければ、周囲から理解されず、いつまでも解決しないということもあり得ます。身に危険が及ばないように離婚を進めたい時は、弁護士に対応を依頼することをお勧めします。

DVの種類

DVと聞いて連想するのは「身体的暴力」という方が多いと思います。ですが、暴力と一言で言ってもその形態は一様ではなく、いくつかの種類に分類することができます。
DVの種類として挙げられるのは、主に以下の3つです(男女共同参画室HP参照)。

身体的DV

身体に直接危害を加え、怪我を負わせるような暴力のことを言います。夫婦間で行われたものであっても、内容によっては、傷害罪や暴行罪などの刑法上の犯罪行為となることがあります。

【具体例】

  • 殴る、蹴る、叩く
  • ものを投げる
  • 首を絞める
  • 髪を引っ張る
  • 刃物をつきつける
  • タバコの火を押し付ける
  • 熱湯をかける
  • 突き飛ばす など

精神的DV

一般的にモラハラ(モラルハラスメント)と言われる行為であり、心無い言動で相手の心を執拗に傷つけたり、恐怖心で支配したりする行動が該当します。
「子どもがどうなってもいいのか」などの脅しや「バカ」「死ね」といった暴言もこれに該当します。外傷がないため、周囲が気づきにくいのが特徴です。

【具体例】

  • 大声で怒鳴る
  • 暴言を吐く
  • 何を言っても無視する
  • 人前でバカにする
  • 子どもに危害を加えるといって脅す
  • 長時間にわたり説教をする
  • 命令する
  • 批判する など

性的DV

嫌がっているのに性行為を強要したり、中絶を迫られたり、避妊に協力しない、などが性的DVに該当します。
夫婦間であっても、暴力・脅迫による性交は許されないものであり、刑法の強制性交等罪に該当する可能性もあります。

【具体例】

  • 性交渉を強要する
  • 避妊に協力しない
  • 中絶を強要する
  • 無理やり性行為の動画を見せる
  • 嫌がっているのに裸の写真や動画を撮る
  • 子どもができないことを一方的に責める
  • 自分の浮気を無理やり認めさせる など

上記以外にも

  • 経済的DV
    生活費を渡さない、自由にお金を使わせない、外で働くことを嫌がる、借金の強要
  • 社会的DV
    友人や身内との付き合いを制限する、スマホをチェックする、行動をチェックする
  • こどもを利用したDV
    こどもの前で暴力を振るう、こどもの前でバカにする、悪口を吹き込む

などが指摘されることがあります。

離婚事由になるDVとは?

DVを受けていることを理由に、離婚することは可能です。一般的に離婚をする時は、まず、夫婦間や裁判所での調停手続を利用して、離婚について話し合います。
そして、夫婦間の協議や調停を通じてお互いに納得すれば、離婚することができます。
しかし、調停でも離婚の合意に至らなければ、最終的には裁判で離婚するか、しないかを争うことになります。

離婚や慰謝料請求に必要なDVの証拠

DV加害者の中には外面が良く、周りから「いい人」と思われているケースも少なくありません。そのようなタイプの人は、世間体を気にして離婚を嫌がる傾向があり、話し合いが難航する可能性があります。

話し合いや調停で離婚の合意に至らなければ、裁判で争うことになります。裁判で、DVによる離婚と慰謝料の支払いを認めてもらうためには、「DVが原因で婚姻関係が破綻している」と証明しなければなりません。証明のための有力な証拠は、以下のようなものになります。

医師の診断書や受診歴

医師からの診断書や医療機関への受診歴は、離婚や慰謝料を求める場合に最も有力な証拠となります。どんなに些細な怪我でも「DVを受けたこと」の証明として、医療機関にかかり、医師からの診断書を取得することが大切です。
外傷だけでなく、暴力や暴言などが原因でうつ病やPTSDなどの精神的な疾患を発症した場合も、同じく医師からの診断書を取得しましょう。

診断書を取得する際は、医師にDVが原因であることを伝え、初診日や治療に要する期間も記載してもらえば、DVを受けていた期間や頻度、怪我の程度、行為の悪質性などを判断する有力な資料となります。

被害を受けたものの写真

暴力を振るわれたり物を投げられて怪我をした場合、怪我の程度がどんなに軽くても、証拠として写真を撮っておきましょう。
怪我をした部分と自分の顔が一緒に写るように撮影しておくと、証拠としての信用度も高まります。

また、怪我の写真だけでなく、相手が壊した物や暴れた後の部屋の様子、殴って壁に開けた穴などの写真も証拠として有用です。
これらの写真と医師の診断書を組み合わせることで、裁判官がDVを受けていた事実やその内容、程度、悪質性などを推定するための、有力な材料となります。

メールや電話、録音

精神的DVの場合など、怪我の写真や医師の診断書を取得することが難しい場合は、相手からの謝罪メールやLINE、謝罪電話の録音データがあれば、「精神的DVを受けたこと」を示す証拠となり得ます。
また、実際に相手が怒鳴ったり、罵詈雑言を浴びせたりしている最中の録音データもあれば、より証拠としての有力性が高まります。

しかし、録音していることが相手にばれると、相手を怒らせ、より一層酷いDVを受ける可能性があるため、まず身の安全を第一に考え、相手に知られないよう、細心の注意を払ってください。

メモや日記

相手にされたことや言われたことを詳しく記録したメモや日記もDVの証拠となり得ます。
ただし、日記やメモだけでは、「客観的に有力な証拠」とはなり得ません。
あくまでも、写真や診断書などの他の証拠で示した事実の裏付けや、有力性を補充する役割となります。

日記やメモを残す際は、DVの内容や受けた日時、場所、シチュエーションをなるべく具体的に記録しましょう。なお、日記やメモの内容を後で加筆修正したりすると、証拠としての信憑性が大きく損なわれますので、ご注意ください。

警察や相談機関での相談記録

DVを受けていることを警察や公的な相談機関に相談した場合もDVを受けていたことの証明に役立ちます。
相談先から、相談カードや相談記録といった書面を出してもらうことで、相談の日時や相談内容などを証明することができます。

DVで離婚する際の慰謝料

DVを受けたことを理由に離婚する場合、被害者はDVの加害者に対し、DVを受けたことに対する精神的苦痛として、慰謝料を請求することができます。

DVを長期間にわたって受けている、頻度が高い、内容が酷い、怪我や後遺症の程度が重い、などがあれば慰謝料の額も高額になると考えられます。
可能な限り高額な慰謝料を獲得するためには、相手に言い逃れされないよう、なるべく早い段階で、有力な証拠を多く集めておくことが重要です。

DV加害者と離婚する方法

DV加害者に離婚を切り出した場合、相手が逆上し、より酷いDVに発展するというケースがよく見受けられます。そのため、DVによる離婚を考えている場合は、離婚話を切り出す前に、別居をお勧めします。

都道府県や市町村あるいはNPO法人等が設立しているシェルターを利用できる場合がありますので、警察や行政のDVセンターに相談し情報収集を行うことも重要です。

DVを受けている証拠が揃ったら、相手に知られないように別居の準備を進め、自分や子供の身の安全を確保してください。

第三者を挟んで話し合う

DVが原因で離婚する場合、夫婦の話し合いだけで離婚を成立させるのは並大抵ではありません。そもそも、DVの加害者の精神状態が普通でないケースや、DV を行っている自覚がないことも多く、当事者だけで建設的に話し合うことは難しいでしょう。

さらに、加害者と対峙して離婚を申し出ると、相手を逆上させ、より壮絶な暴力を振るわれるなど、命に関わるトラブルに発展する可能性もあります。
DV加害者と離婚する場合、まずは別居して加害者と物理的な距離を置き、間に裁判所や弁護士などの第三者を挟んだ形で話し合いを進めましょう。

離婚調停を申し立てる

離婚調停とは、裁判所において、裁判官と調停委員(裁判所が任命した有識者)を夫婦の間に挟んで行われる、離婚についての話し合いです。
調停での話し合いは、基本的には全て調停委員らを仲介して行われ、相手と直接顔を合わせなくて済むように配慮されています。
そのため、被害者は、身の安全を確保しながら、冷静に、離婚や慰謝料などについて、自分の意見を主張することができます。

身体的な暴力や脅迫を受けている場合は、離婚調停の申立てと同時に、自分や親族に近づくことを禁止する「保護命令」を申し立てることも検討しましょう。

調停で合意できなければ裁判へ

離婚調停は話し合いの場であり、相手が合意しない限り不成立で終了します。その場合、最終的には裁判で離婚や慰謝料の額などについて決着をつけなければなりません。

離婚裁判では、当事者の主張や提出された証拠を総合的に考慮し、裁判官が離婚の可否や慰謝料の額について最終的な判断を下します。

DVに関連する離婚裁判では、受けたDVによって婚姻関係が破綻したことを客観的な証拠を用いて証明する必要があります。DVの内容や程度を示す客観的かつ有力な証拠が多いほど、裁判で離婚を認めてもらえる可能性が高まり、慰謝料の額も高額になる可能性があります。